アジ・ダハーカ/Azi Dahaka
ザッハークとも。
ゾロアスター教の邪神アンリ・マユと共に善神アフラ・マズダに戦いを挑む竜。アジとは古代アヴェスタ語で「蛇、竜」を意味し、ダハーカがその名を現す。つまり、アジ・ダハーカとは竜のダハーカといった意味となる。
アンリ・マユの息子とも言われ、ゾロアスター教の聖典「アヴェスタ」によると三つの頭、三組の牙、六つの眼を持ち千の魔術を操ったとされる。あらゆる悪の根源を成す者として恐れられる。更にアジ・ダハーカはその体内に無数の蠍、蜥蜴、蛇、蟇蛙などの害虫が詰まっており、剣でその身体を切り裂くと傷口からそれらの害虫が無尽蔵に湧いて出たとされる。性質の悪さでは類を見ないほど凶悪。
■その歴史
ゾロアスター教以前の古代ペルシャの神話にもその名を見る事が出来る。ここではペルシャの敵として、人間や家畜を殺す不気味な怪物として描かれている。
その後に創始されたゾロアスター教においても、悪の手先として取り入れられた。そしてアフラ・マズダの息子である火の神アータルと敵対する悪魔として位置付けられる事となった。
■その戦歴
火の神アータルと世界の支配者たる事を象徴する「輝く光輪」を巡り争ったとされる。
善神アフラ・マズダも邪神アンリ・マユもその「輝く光輪」を欲し、両陣営から最も素早い者が選ばれた。それがアータルとアジ・ダハーカであった。この時の戦いに決着はつかなかった。
後にスラエータオナという英雄によって倒される。スラエータオナ(スラエータナオとも)は最初棍棒で頭、肩、心臓等を打ち据えたものの殺す事が出来ず、剣を取り出して斬り付けるとその度に傷口から害虫が湧き出てきた。このままでは世界が害虫に埋め尽くされると危惧したスラエータオナはアジ・ダハーカを殺す事を諦め、鎖で縛り上げるとダマーヴァンド山の洞穴に封じ込める事にした。ギリシャ神話のヒュドラしかり、首の多い竜はえてしてしぶといのだろうか。
世界が終末を迎える際にはその戒めを破り、世界の三分の一を滅ぼすとされる。そしてクルサースパ(ケレサスパとも)によって今度こそ完全に倒される定めだという。
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