第四章:1 『4−4=?(1)』
1999/7/1
貴方の視点から見えるモノ

少女が落ちる…


全感覚が鋭敏に研ぎ澄まされる/自身と世界の境界線を知覚/鮮烈な自我の形成/世界の法則を理解/演算開始/理論を修正/自分の世界を構築する/王冠、叡智、理解、慈悲、苛烈、美、勝利、栄光、基盤、王国/生命の樹/破壊/崩壊/瓦解/展開

そう、それは御伽噺ではなくて。

すべて確率で成り立つ世界。波動関数によって表現される世界。理論的に断定できない世界。波動関数の収縮。観測によって確率が確定、状態を形成する。波動数の収縮が起こる刹那までは、確率の混ざり合った世界。煮え滾る混沌のスープ。歪曲した宇宙。猫。猫と毒ガス。生と死の混合された猫。崩壊が予測される放射性原子。シュレディンガーの猫。量子力学と古典力学。ミクロとマクロ。提示される、一つの解。波動関数の収縮を否定。世界の分裂を仮定。無限の可能性。平行世界。分岐点の一つに存在する観測者。

そう、それは御伽噺ではなくて。
現実に存在する学問、理論、つまり理性の世界。

可能性の世界。
世界を語るのには、多くの言葉は要らない。
語り得ぬ事には沈黙しなければならない。

Yes/No
陽/陰
黒/白
♂/♀
+/−
生/死
聖/邪

つまり、事象に関してのOn/Offのみが支配する。
あらゆる事象の総数をNとしよう。その事象が在る場合と無い場合、世界は我々に二つの可能性を提示する。よって、世界の可能性の総数は2のN乗。それが、世界の可能性であり、それだけ在る世界の終わりと始まりを示す。
しかし、このお話には関係ない。
―――そもそも、ここは世界ですらないのだから。
目の前を見ろ。思い出せ。現実に立ち返れ。
そこは世界だ。ここは虚像だ。

『きえないひび』は作品である。
製作者は比良坂綾音。
『山田ざくろ』は死ぬ為に生まれた。
『田中加奈子』は殺される為に生まれた。
『火狩アイ』は調べる為に生まれた。
『菅原樹』は助ける為に生まれた。
『邪魔夜』は嘲笑う為に生まれた。
『赤マント』は殺す為に生まれた。

創造主、比良坂綾音の戯言と世迷言を絶妙の匙加減でブレンドし…
『きえないひび』が、今ここから始まった。

ぐしゃり。

―――そして、世界は暗転する。

続劇 > 『4−4=?(2)』


今回のBGM ?作曲『?』
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